日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっている時点で、短くないというツッコミはしないでください。
一次創作(オリジナル)なので、そういったものが苦手な方、嫌いな方は
このままスルーすることをお勧めします。
見てしまった後の苦情は受け付けません。
「”がらくた”って言うのはね、この【junk Field 】に捨てられたモノを指すのよ」
日も傾いた夕暮れ時の突風だった。
目を開けることも困難な程の強烈な風が、集落を一気に吹き抜けた。
突風であるにもかかわらず、どこか柔らかで暖かなその風が過ぎ去ると
集落の枯れ木に、一斉にピンク色の花が咲き誇った。
目を閉じる瞬間まで枯れ木だったものが、見るも鮮やかな花を咲かせている。
一瞬で起こったその出来事に、唖然としていると、集落のいたるところから
歓声が起こり、場は楽しげな宴会会場と化していた。
家々から次々運び出される料理に、乾杯の声がいたる所から聞こえてくる。
「ぼさっとしてると、ぶつかるわよ」
背後から聞こえた声に振りかえれば、おそらく酒が入っているのであろうコップを手にした
ジルフェオードが、にこやかに手を振っていた。
彼の後方を見れば、即席で作られたと思われる座席で食事をとっているコリコと
楽しげな音楽に合わせてくるくると舞い踊るタカラの姿があった。
見知った姿ということで、セイランとがらくたサマの姿を探してみたが
二人の姿は見つけることができなかった。
「ソラのことを探してるのかしら?」
挙動不審だっただろうか。
ジルフェオードにズバリと言い当てられたが、何も隠すことはなかったので
肯定を意して頷いてみせると、ジルフェオードは困ったように苦笑した。
「あの子は周辺の巡回、付き添いにセイランもいっしょよ」
しばらくしたらまた戻ってくるでしょう。
祭りの時まで忙しそうに働いている少女と青年の姿を思い浮かべ
自分はここで祭りを楽しんでいてもよいのだろうかという
少々の罪悪感と緊張感が、胸の中にもやもやと浮かんだ。
が、祭りの楽しげな雰囲気に、そんな気分も次第に薄れる。
気づくと目の前に、野菜と肉を煮込んだスープのような料理が差し出されている。
差し出し主をたどれば、それはジルフェオードで
さぁ食べろと言わんばかりの笑顔で器を、半ば強引に持たせられた。
「せっかくの花祭りだってのに、楽しそうじゃないわね」
不満そうに眉を寄せるジルフェオードは、コップに入っていた液体を
勢いよくあおり、空になったコップを手近にあったテーブルに置いた。
「聞きたいことや言いたいことがたくさんあるって
顔してるわね。分かりやすいわよ、その顔」
自分は口に出さずともわかる程に、心中が顔に出やすいのだろうか。
ジルフェオードは都合よく近場にあった席にすわり足を組むと
ニンマリと口の橋をつり上げ、首をゆるりと傾げてみせる。
男にしては妙に艶のある動作に、一瞬彼の性別を忘れてしまう。
ほらアンタも座りなさい、と声をかけられるまで、その動作に思考をもっていかれていた。
目を瞬かせて、思い出したように体を動かし、すぐ後ろにあったイスを
引き寄せて、ジルフェオードの前に座る。
スープを手にしていたことも思いだし、せっかくなので
スプーンで透き通ったスープをすくい、一口。
野菜の甘みと肉の味がしっかりとしてて、暖かい。
美味しい、と口に出せば、ジルフェオードがさも当たり前のように笑って
形のよい唇をゆっくりと動かした。
そして冒頭の言葉へと繋がる。
何の前フリもなく、予兆もなく、そう言ったジルフェオードの顔は
何か問題でも?と言いたげな笑顔のままで、可愛らしく首まで傾げて見せる。
言葉を理解するのにたっぷり数秒かかった。
彼の言うその言葉が、自分の考えていた疑問にたいしての言葉で
その答えになるモノなのだと。
「脈絡なく話すのは悪かったわね。でも、アンタも回りくどい言い方は好きじゃないでしょう」
だから論点だけ話せば問題ないわよね。
有無を言わせない言葉の波に、ぎこちなく頷いて返せば
朗らかな笑顔を浮かべたジルフェオードは、何度も頷いた。
「ここは世界のゴミ捨て場【junk Field 】
ここに在るモノはすべて”がらくた”のため、外のモノがここから何をどう持ちだそうと
一切の罪にはならない。
【junk Field 】からヒトを持ち出しても、それはただ”がらくた”を拾っただけの話」
スラスラと流れ出る言葉が、そこで途切れる。
ヒトを持ち出すとはつまり、いわゆる誘拐という事ではないのだろうか。
ジルフェオードに訪ねれば、それは否であり、是であるという。
誘拐とは本来罪であるが、それが”がらくた”であるならば話は別だと。
「ここはね、ぶっちゃけて言えば無法地帯なのよ。
他の国の圧力はないけれど加護もなければ、法もない。
そしてここに住まうモノの大半はヒトではない”がらくた”
たとえヒトであっても、”がらくた”とされれば
それは所有者のいないガラクタと同じなの」
たとえば今周りでにぎやかに騒いでいるヒトビト。
たとえば集落を囲む際限のないガラクタの山々。
どちらも等しく”がらくた”であるのだと彼は言う。
そんなことがあるのか。
ヒトと無機物が同じラインにあるとは、どうしても思えなかった。
しかしそれがここでは当たり前なのだと、ジルフェオードは言う。
「まぁ、だからと言って黙って攫われたり、モノを持ち出されているかというと
そうでもないのは、昼間の騒動を見ていたアンタなら、わかるわよね」
昼間の騒動、リーオンという商人の男たちとの諍いのことだろう。
仕入れる、と言ったリーオンのセリフが頭をよぎる。
しかしそれを正面から拒否したがらくたサマ。
「無法地帯ではあるけど、だからこそ、そこだけの法というものもあるの。
この【junk Field 】では、”がらくたサマ”であるソラが法なのよ」
だから彼女の納得しない商人の仕入は、ココでは成り立たない。
仕入れの対象がヒトであろうと、無機物であろうと。
がらくたサマが納得しなければそれは阻止されていると言う。
阻止できるだけの力があると、昼間の諍いで十分に理解はできたが
なぜ彼女がそのようなことをしているのか、疑問に思った。
がらくたサマや集落のヒトの態度から、がらくたサマが
そのような働きをしていても何か得があるわけではないように思う。
金銭をもらっている様子もない。
「……あら、ソラがどうしてあんなことしてるのか気になるの?」
顔にそう書いてあるわよ。
ジルフェオードの指が眉間に触れる。
知らぬ間に眉間にしわが寄っていたようだ。
自分の身が危ないかもしれない事態が起こっているというのに
何の見返りもなくその危険に挑むようながらくたサマの考えが
どうしても理解できなかった。
ジルフェオードにそのことを尋ねてみると、さぁ?、という
何とも曖昧な返答だった。
「直接聞いてみたら? ソラは聴いたら答えてくれると思うわよ」
にこりと笑顔を見せて、ジルフェオードはコップの中身を大きくあおった。
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