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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズと、若干つながっている時点で、短くないというツッコミはしないでください。

一次創作(オリジナル)なので、そういったものが苦手な方、嫌いな方は
このままスルーすることをお勧めします。


見てしまった後の苦情は受け付けません。













少女に案内されて数日経つ。
『煉瓦亭』と呼ばれている、少女が経営しているのであろう宿での生活も同じ日数。
どうやら自分はこの世界の人間ではないのではないかと思考し始めたのが三日前。
そして自分はどうやら一部記憶喪失であるらしいということに気付いたのも三日前。

というのも、がらくただらけの【junk Field 】で目覚める前に
自分が一体どこで何をしていたのかすっぽりと抜けていて、思い出すことができなかった。
かろうじてどんな生活をしていたか、ということと、最低限であろう知識は
覚えていたが、自分の名前や家族、どこに住んでいたかも覚えてはいなかった。

そして、なぜこの世界の人間ではないという突拍子もない結論が浮上した理由。
自分の知る常識と、少女の知る常識というものが、ズレにズレているということ。

空の色は何色かと問えば、少女は金色だと答えた。
ちなみに自分は青色、もしくは空色と答える。

少女は世界を『エヴェルブ』と称していたが
もしも自分が世界を表すなら、天文学的な名前で世界を称する。

自分の住んでいた日の出ずる国の名前をだせば、そんな国は知らないと少女は答える。
逆に、獣や盗賊は往来闊歩していたかと少女に問われた。
あいにく自分のいた国ではそんな物騒なものが往来闊歩しているわけもなく
首を振って否定の意を示す。

少女の当り前が、自分にとっては当たり前ではなく
自分の当り前が、少女にとっては当たり前ではなかった。

結果、肯定したくないが、自分はこの世界の人間ではないらしい、という答えに行き着いた。
行き着いたはいいが、結局のところ何か行動に移すことは考えつかず
どうしたものかと考えていたが、行く場所がないならこの『煉瓦亭』で過ごせばいいという
少女の言葉に甘え、特に何か大きな行動を起こすでもなく、平坦な日々を送ることを決めた。

空を見上げて一呼吸。
空は青いものと思っていた自分の感覚はきっと間違ってはいないのだろう。
しかし見上げた空の色は、青色ではなく、薄い夕焼けのような金色。
がらくたサマと呼ばれる少女の髪色と同じ金色。

今が夕方ではないということは、自分の真上に存在している太陽を見ればわかる。
もう一度、と、呼吸をする。
がらくた置き場ということだけあって
木々の息吹を感じるような匂いというものはなかった。
その代わりに、今現在昼飯の調理中なのであろう煉瓦亭の中から漂う香しい料理の匂いが
腹の中の虫を小さく鳴かせた。

働かざるもの食うべかざる。

少女にそう指摘され、仕事として煉瓦亭近辺のがらくた整理を頼まれた。
整理といっても、具体的にどうすればいいのかわからなかったのだが
ようするに、積み上げられているガラクタの山が崩れないように整えてほしいということだった。
普段は少女が、まれに煉瓦亭に住むヒトビトががらくた山の整理を行っているらしかった。

くるりとあたりを見回すと、辺り一面ガラクタだらけ。
煉瓦亭の付近だけは、シーツや洗濯モノの干された物干し場や
洗濯場などで使用するため、ある程度がらくたは掃けられているようだが
それ以上はただ、がれきやガラクタが無造作に積み上げられているという状態だった。
いつ崩れてもおかしくない状況とは、まさに目の前に広がったこの光景なのだろうと思う。

ここはいっそ大きく崩してしまったほうが逆に危険も少ないのではないだろうか。

大雑把な考えが頭をよぎったが、今この場でそんなことをすれば、天気のいい日。
最適とばかりに物干し場に干された、洗濯済みの真っ白なシーツが、
ガラクタの崩れた衝撃で吹き上がった砂埃で、薄汚れてしまうことは目に見えている。
それはさすがに避けたいため、ガラクタの山を崩す案は、脳内で却下された。

結論。
重くなさそうなものから少しずつ退かして、山を小さくしていく。
これがベストだろう。

いざ、ガラクタの山を慎重に上り、目についた廃材や屑鉄を下に投げ落としていく。
とにかくこの山の部分だけでも削っておかなくてはならないと、慣れないながらも
セコセコと持てる範囲でのガラクタを山の上から落としていった。

しばらく、がらくたの山が削れたことに気づき、大きく伸びをして体の線をほぐす。
ずっと同じような体制が続いていたため、急に大きく動いた筋肉と骨が
ミシ、ギリッと変な音をを立てたような気がする。

「あ、降りてきたんよー」

ある程度まで削れたガラクタの山を慎重に降りると
そこには二つのおさげがかわいい金髪の少女と、
緑の髪に緋色のマントを羽織った青年の姿があった。

この数日間の間に、二人のその姿には見覚えがあった。
おさげの少女がタカラ、緑の髪はコリコという青年だったはずだ。
二人の手には、先ほど自分は上から落としたと思われる角材や廃材が所持されており
さらに言うなら二人の後方には、鉄でできた荷車のようなものが放置されていた。
タカラとコリコは所持していた廃材をその荷車の上に乗せると
手についた汚れを、パンパンと払落し長い紐を使用して、廃材が荷車から落ちないように
紐でしっかりと固定をした。

「おつかれさま」
「小山、ちょっとだけ小さくなったんよ。もうすぐなくなるんよー」

ねぎらいの言葉と楽しそうな声。
煉瓦亭で世話になる際に、聞いた声と同じだった。
タカラとは使用している寝泊りしている部屋が近いため、たびたび顔を合わせることもあった。

「今のところ、廃材はこれで全部かな?」

落としていた廃材やがらくたが積まれた荷車を指さして、コリコが訊ねるため
こちらも首を縦に振って肯定を意を示す。

「じゃぁ、これは煉瓦亭の玄関近くに置いておこうか」
「あとで取りに来てもらうんよー」

ぴょんぴょん跳ねるタカラを捕まえて、コリコは、
用事は済んだと、煉瓦亭の中へと入ってしまった。

残された自分は、さてどうこの後過ごせばいいのかと思案したが、宿の中から昼餉を伝える
鍋の音が聞こえたため、思考を中断し、虫ずっと鳴きっぱなしのおなかを抱えて
煉瓦亭の中へとも出ることにした。

 


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