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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっている時点で、短くないというツッコミはしないでください。

一次創作(オリジナル)なので、そういったものが苦手な方、嫌いな方は
このままスルーすることをお勧めします。


見てしまった後の苦情は受け付けません。








商人を見たというタカラを先頭に、集落からガラクタだらけの道なき道を進むと
ガラクタの少ない外壁が見えた。
外壁がある以外大した特徴もない場所だったが、その外壁をガラクタの山から見下ろした
がらくたサマが、一瞬目を細めた。

何かあるのだろうかと、がらくたサマが見ている場を
見直してみれば、外壁の一部が崩れて穴があいていた。
外壁の下部であり、少ないとはいえガラクタが散乱しているため見づらくはあるが
たしかにそれはヒトが三人程度は通れるほどの穴だった。

「外壁、崩れてる場所多かったっけ?」
「前にココに来た時は、穴なかったんよ」

コリコの問いに、タカラが首を振って返した。
がらくたサマは目を細めたまま、穴をにらみつけている。

「誰かが外から穴をあけたのね。
 壁を直すこちらのことも考えてもらいたいものね」
「こんな穴あけて入ってくる輩なんて、決まってるでしょ」

誰かなんて濁す必要ないわよ、とジルフェオードが、がらくたサマの言葉に付けくわえた。
誰か、が件の泥棒商人だというのは、言われずともわかる。
各々ガラクタの山から慎重に降り、外壁に開いた穴を見直す。
穴から外の様子が見えたが、一見するとガラクタた置き場とは
全く違う、青々とした草原が広がっているのがわかった。

「ソラ、この穴から先は」
「わかっているわ、外に出てしまうわね」

けれど関係ないわ。
がらくたサマがきっぱりと言って退けた。

「現状では何も盗られていないようだけれど、こうして外壁を壊している以上
 少なくとも、私が”彼ら”に手を出す理由は十分にあるのよ」

淡々としたしゃべりだが、どこか早口に聞こえたその言葉。
がらくたサマは、カラン、と履いた下駄の音を鳴らしながら
外壁に開いた穴から、外へと出た。
続くようにコリコとタカラが出ていきジルフェオードに
促されて自分も穴から外へと出ると、その後ろに彼もついてきた。

そこには地平線が見える程、遮断物のない緑の草原が広がっていた。
数日間ガラクタの山ばかり見ていた為だろうか。
それは、異様に見慣れない風景に映った。

しばらく呆然と風景を見ていたが、がらくたサマがこちらを振り返った。
そして、手に持った銀のシャベルの先端をこちらへ向けた。
無言で向けられた銀色の切っ先、太陽の光を受けて輝く。
その意図が分からず、思わず一歩後ずさる。


「なんだ、城から出てきたのか、屑野郎」


自分の後方から聞こえたのは、聞き覚えのない声。
驚いて振り返れば、そこにいたのはやはり見覚えのない男の姿と
日常では見慣れない物騒な武器を握った五人の男達の姿があった。

男達の先頭に立つのは、ザンバラの短い茶髪を、覆うようにして巻かれた赤いバンダナに
時期的には外れているような、くすんだ茶色のロングコートを着込んだ男。
そばかすだらけの顔に右目を眼帯で覆う隻眼のその男。
一目みただけでは男がいったい何者なのかわからない。
だが、がらくたサマのとった行動は、男がただのヒトではないことを示していた。

「アナタ、また来たのね」
「俺は商人だぜ?売るモノを仕入れにくるのは当然だろ」

感情の見えないがらくたサマの言葉に、男は当たり前のように笑って返す。
商人、と男は言った。
周りを見れば、男に対して警戒心を露わにしている
ジルフェオードとコリコの姿。
自分の後ろに隠れて、男達の様子をうかがっている。

「そろそろ、このゴミ捨て場では祭りの時期だろ。仕入れには絶好の時期だってわけだ」
「商売の仕入れだというのなら、堂々と門から入ってきたらどうかしら」

やましいコトがなければ入れるでしょう。
がらくたサマがズバリと言い返せば、男はニヤニヤとした笑いを見せる。

「俺たちは、てめぇらの目の無い所で仕入れをしてぇんだよ」

この意味わかってんだろ。
自分にはさっぱりとわからないが、この場にいる他の者達には
その意味が伝わったのだろう。
タカラが背の服にしがみついているのがわかる。
ジルフェオードとコリコの空気も明らかに変わった。

「リーオン、無駄だと思うけど一応聞くよ」

コリコが口を開く。
その間に、後ろに隠れているタカラと共に、ゆっくりと後ずさる。

「何もしないで、帰ってもらえませんか」

男、商人のリーオンが、コリコの言葉を聞いて口の端をあげる。
と、不思議な光景が目に映った。
リーオンの周りを囲むように、輝く輪が浮かび上がった。
輪には何か模様のようなモノが見えるが
その輪がいったい何なのかはわからない。

輝く輪は、コリコとジルフェオードの周りにも浮かび上がった。
しかし、二人に慌てたり、困惑する様子は見られない。
リーオンが輪に手を伸ばすと同時に、コリコとジルフェオードも
自身を囲む輪に手を伸ばし、そして触れる。


「収穫なしに帰れってか、そいつは無理だ」


仕入れに来たんだからな。
言葉の終わりと同時に、リーオンが輝く輪を掴み勢いよく
輪を引き抜いたように見えた。
輝く輪はリーオンの手に、光となって収束し、細長い形状を成す。
そして光の収束が収まり、リーオンの手から光が弾けると
彼の手には日常ではまず見ることのない、長い剣が握られていた。

リーオンの手に剣を認識した次の瞬間、自分の真横を突風が吹き抜けていた。

黒い突風。

風の行方を追いかければ、そこにはリーオンと剣を交える
がらくたサマの姿があった。

しかしその姿は、いつもの裾のほころびたスカート姿の少女の姿ではない。

いつも握っている銀色のシャベルの代わりに、握っていたのは刀身から柄まで銀色の剣。
纏う服は薄汚れた黄土色のエプロンでも、裾のほころびたスカートでもない。
自分の知識の中で、もっとも納得しやすく例えるならば、それは鎧のない騎士。
騎士だとわかる、服だけを纏った黒い騎士。

形容し難いその装束に身を包んだがらくたサマが
リーオンの剣と、銀の剣を交えている。

状況は他にも変わっていた。
リーオンの後方で控えていた男達が武器を構えて、こちらへと向かってくる。
途端、バンッ、と何か破裂するような音が耳に響くと
ナイフを構えた男が、右の肩を押さえて後ろに倒れ込んだ。
なにが起こったのかわからない。
ハッとした時には、男達の中で緋色のマントが
鮮やかに舞踊り、二回の打撃音の後に、曲刀を振った男が横に吹っ飛んでいた。

ナイフの男が倒れたのは
ジルフェオードが――いつの間にか所持している――狩りの時に使うような
銃身の長い銃でその場から狙撃したから。

曲刀の男が吹っ飛んだのは、男達の中に走り込んだコリコが
手に持った拳銃で男のこめかみを殴り
その後、勢いよく男の体に蹴りをいれたから。

残りは四人。
男達は間近にいるコリコに、持った武器を振りかざす。
瞬間、背後からキンッ、と金属音が通り過ぎていき
気づけば斧を振りかざした男の斧が、その手から離れ、重い音を立てて地面に落ちた。
さらにもう一度、金属音が耳の横を通りすぎると今度は棍棒を持った男が
手を押さえてうづくまり、斧と同じく、棍棒が草の上に音を立てて落ちた。

何事かと思う中、風を纏わせる回転音が徐々に近づいてくる。
音の先には見たことのない輪があり、輪は宙で一度交錯した後
こちらへとやってくる。
やってきた武器が、本で読んだチャクラムという武器に似ていると
思ったときにはソレはすぐ目の前まで来ていた。
暢気に、これは自分に当たりそうだと思っていると背後からタカラが飛び出て来て
飛んできたチャクラムを器用にキャッチして見せた。

と同時に再度、バンッ、と破裂音が響くと
短刀を持っていた男の手から短刀が、弧を描いて放たれいた。
構えた状態のまま唖然としている男の顎めがけて
体勢を立て直したコリコが勢いのまま拳を打ち上げると男の体がぐらつく。
そしていつの間にか男に向かって走っていたジルフェオードが
長銃をバットのように構えなおして、男の顔面を強打。
男は綺麗に体を浮かせて、草原に仰向けに倒れた。

「骨がないわねー」

ジルフェオードが長銃をくるりと一回転させ、構え直す。
構えた銃身の先には、斧を持っていた男。
武器を落としただけで無傷だった男の額に、乱暴に銃口を
当てて見下ろす姿は、悪役というにふさわしい姿だったが
口に出すと銃口をこちらに向けられかねないので
言葉は喉で押さえ込んだ。

「なんだ、そっちは終わっちまったのか」

金属音の中にリーオンの声が混じる。
がらくたサマと剣を打ち合い、離れながら幾度も刃を交錯させている。
現実離れした金属音が耳を抜けていくのが新鮮だ。

リーオンが勢いよく剣を横に薙げば、漆黒の装束を翻して
がらくたサマが後ろに跳び退き、反動をつけてリーオンの
懐に飛び込み銀の剣を振るう。
ガキンッ、と耳障りな金属音をたててリーオンが刃で
銀の剣の一閃を受け止めると、がらくたサマが体を捻り、横っ面めがけて蹴りを放つ。
リーオンは状態を後ろに反らして蹴りを回避し、互いに剣を押し合い
勢いをつけて双方後ろへと跳び退いた。

「連れの男達はもうのびてるぞ。お前も退いたらどうだ」

いつもよりも若干低い声で、がらくたサマがリーオンへ声をかける。
言葉遣いも少女というよりも、青年を思わせる口調だ。
服装だけではなく、身体的にも変化しているのだろうか。
リーオンは剣を宙でくるりと曲芸のように回して持ち直す。

「仕入れにきて、毎度こんな邪魔に合うんじゃ、用心棒を雇う意味がねぇな」

用心棒とは先ほどコリコ達にやられていた男達のことだろう。

「こんなゴミ置き場からゴミを持って行こうとしただけで
 なんで俺たちはてめぇらに邪魔されねぇといけねぇんだ?」
「お前が持ちだそうとするモノが、本当にゴミならば、わざわざ邪魔はしない」

がらくたサマが剣を軽く降ると、リーオンも剣を構え直す。

「けれどお前達は、ゴミでなく、”がらくた”をもち出すだろう」

ならば邪魔されても文句は言えまい。
凛とした声でがらくたサマが言い放つ。

「いいか屑野郎、ここはゴミ捨て場、がらくた置き場。
 世界中の連中がここをそう呼び、そう認識してんだ!!
 そんなところから何を持ちだそうと、誰にとがめられるいわれはねぇ!!」

つまり。

「外でいきる俺達が、がらくた共を持ち出そうが連れ出そうが
 何の罪にもならねぇし、文句言われる筋合いもねぇ」

どういうことか説明を求めたい気分だ。
リーオンの言うことがさっぱりと理解できず
話において行かれているが、やはり他の者は理解できているようで
がらくたサマを除き、渋い顔をしている。
コリコに至ってはこの数日間で、一度も聞くことがなかった舌打ちまで聞こえた。
それだけ男の言っていることが、彼らにとっては重い意味をもっているのだろう。

「それは外で生きるそちらの言い分、中にイるモノには、中でイきる言い分がある」

相変わらずの淡々とした言い方だった。
しかしソレでいてはっきりとした言葉だった。
リーオンがヤレヤレと言いたげに首を振る、再び彼の周りに
輝く輪が浮かび上がり、手にしていた剣は光となって、輪の中へと吸収されていった。
光が完全に収まると、輝く輪も薄れて消えていった。

「そっちは戦れねぇ奴を連れてるみてぇだし、今日はこのくらいで退いてやる」

リーオンの視線がこちらへと向けられる。
視線の合う場所には、タカラと自分がいたが、リーオンの
言う戦えない人物とは、十中八九、自分のことだろう。
がらくたサマやコリコの視線もこちらに向いているのが、いい証拠だ。


「退くというならば、こちらも持ち帰ってくださらぬか」


思いも寄らない方向から声が降ってきた。
それは外壁の上方。
見上げれば外壁の上に、集落で別れた
赤い髪の青年、セイランが悠然と立っていた。
その両手には人間のようなモノが合わせて二名ほど見える。
セイランは手に持った人間のようなモノと共に外壁の上から飛び降りると
がらくたサマとリーオンの間に軽やかに降り立った。

「集落の周辺に、隠れていたでござるよ」

両手を持ち上げて、気絶しているのであろう男を示して見せた。
リーオンが小さく舌打ちをすると、セイランは手に持った
男達を草の上に、どさりと落とした。

「やっぱり、中に入っていたのね」
「言われたとおり、警戒していてよかったでござる」

爽やかに笑んでみせるセイランに、がらくたサマが頷いた。

「……次は必ず仕入れさせてもらうからな」
「その台詞は聞き飽きた」

ニヤリと笑みを浮かべたリーオンに、がらくたサマが言ってのける。
聞き終えると同時に、リーオンと仲間の男達を白い煙のようなモノが取り囲む。
煙は徐々に増えていき、リーオン達の姿が完全に見えなくなる。
がらくたサマやジルフェオードは、煙から遠ざかるように後ずさると
煙が徐々に収束し、爆発するように一気に吹き乱れた。

爆風のように吹き付けてくる煙が、視界を多い隠す。
煙は徐々に晴れていき、視界があける頃には
リーオンの姿も、連れの男達の姿も見あたらなかった。

「退いた、ようね」

煙が晴れると、そこには黒の騎士の姿はなく、黒のスカートに
銀のシャベルを手にした少女、がらくたサマの姿があった。

「じゃ、とっとと戻りましょうか」
「あ、開けられた外壁の穴はどうする?」

ジルフェオードが、グンッと伸びをすると、コリコが気が付いたと言いたげに
外壁の穴を見る。

「仕方ないわ、まずは中に戻って……」

集落の皆に報告してから考えましょう。

否定の言葉を告ぐ者は、誰もいなかった。



 

 



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