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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっている時点で、短くないというツッコミはしないでください。

一次創作(オリジナル)なので、そういったものが苦手な方、嫌いな方は
このままスルーすることをお勧めします。


見てしまった後の苦情は受け付けません。












 


セイランがいなくなってしばらくすると、道の向こうから
数人の男がこちらへ向かってやってきた。
その中にセイランの姿はなかったが、彼らの姿を見つけたがらくたサマは
荷車をそのままに、男たちのほうへと歩いて行った。

「よぉ、がらくたサマ、忙しいとこ悪いな」
「祭りのためだもの、協力ぐらいいくらでもするわ」

健康的に焼けた腕を惜しげもなくさらした大柄の男は、大きく笑って
がらくたサマが運んでいた包みを取り上げた。
たのんだわよ、と包みを男に包みを任せ、がらくたサマはこちらへと戻ってくる。

「運びは彼らに任せましょう、私たちは先に集落へ手伝いに行くわよ」

どうやら彼らは集落の人間だったようだ。
振り返ると男たちが廃材の積まれた荷車を曳いてきているのがわかった。
がらくらサマの言うとおり、荷車を男たちに任せて、自分たちは集落へと足を傾けた。


そこはガラクタ置き場の中だというのに活気に満ち溢れていた。
周りをガラクタの山に囲まれた楕円形の広々とした空間に、廃材で作られた
家々が多く立ち並んでいた。
家のいたるところにはささやかながらも彩のある装飾が飾り付けられていて
それが祭りのためのものだと、なんとなくわかった。

皆一様に楽しそうに笑い、行き交う。
がらくたサマはそんな人々を微笑ましそうに見ていた。
表情豊かな方ではないが、時たま見せる優しい小さな笑みは、驚くほどに柔らかい。

そういえば、この祭りはいったい何の祭りなのか聞いていなかったことを思い出し
周りを見回すがらくたサマに訊ねてみると、

「これは花祭りよ」

そう答えられた。
それは言葉の通り花祭り。ある一定の時期になると突風が通り過ぎ
このあたりに散々に植わっている枯れ木に一斉に花を咲かせると言う。
そして咲いた花をみんなで愛でながら
飲んだり食べたり騒いだりすることを花祭りというそうだ。

それは別名、花見というのではないかとがらくたサマに尋ねてみると、首を傾げられた。
花見というのもこちらの世界にはないのだろう。
がらくたサマの反応を見ているとそう考えてしまう。

「あなたのイたところにも、似たようなお祭りがあるのね」

花見について興味を持ったのだろうか。
がらくたサマは金糸の髪の毛をふわふわとさせながら、赤い双眼でこちらをのぞき込んできた。
反射的に体を仰け反らせて、顔と顔の距離を取ると、がらくたサマのキョトンとした顔が目に映った。

普段はどこか表情のないがらくたサマだが、こうして何気ないことに対して見せる
ちょっとした変化のある顔が、とてもめずらしいことは、ココでの生活日数が短い自分にもよくわかった。

がらくたサマはひとつ息をついて辺りをまた見回した。
その様子は、先ほどのように祭りの風景を見るようなものではなく
どちらかといえば、誰かを、何かを探すような素振りだった。

何を探しているのか聞いてみようか。
そう思ったときに、がらくたサマの何かを探すような動きが、ピタリと止まった。
がらくたサマの視線の先をゆっくりと追うと、集落の一カ所
廃材や木材が積まれている山にたどり着いた。

そこには、金髪に二本の三つ編みお下げの少女と
深い緑色の髪と緋色のマントを身につけた青年という、見慣れた姿があった。
煉瓦亭の住人である、タカラとコリコ。

二人はこちらに背を向けているため気づいておらず
煉瓦亭でも見たことのない人と話をしていた。
しばらくして、二人と話している人物が、こちらに気づき手を振ってきた。
コリコとタカラも、その動きに気づいてこちらに振り返り、手を振ってきた。

それを合図にしたかのように、がらくたサマは三人のもとへと歩きだしたため
遅れぬように、その後ろについて行った。

「アナタ達、食事の後からいないと思ったら、ココにいたのね」

淡々とした声でがらくたサマが声をかける。

「人手が足りないって聞いていたから、手伝いにね」
「タカラはお祭りで踊るんよー。だから呼ばれたんよー」

コリコは苦笑しながら、タカラがくるくると回りながら言うと、がらくたサマは
コクリとひとつ、頷いた。

「ジルフェオード、アナタも手伝いに?」

がらくたサマの問いは、見たことのない人物に向けられた。
薄い青色の髪を首の後ろで一束ねにし、医者が着るような白衣を着込んだその人物は
がらくたサマの問いにから笑いをして頷いた。

「祭りの準備中でもけが人や体調不良者はでると思ってね。
早いとは思ったけれど昨日からココに来ていたのよ」

女性とも男性ともつかない中性的な声で
ジルフェオードはがらくたサマの問いに答えると、視線をこちらへと向けた。
よく見ると、ジルフェオードの両目は左右で色が違っていた。
右目は灰色、左目はやや緑がかった青色。
不思議な色合いだと思いながら、視線は外さず、互いに見合った状態が続いた。

「ちょっとソラ、この子誰よ?」

ココじゃ見ない子ね。
ジルフェオードが訝しげにこちらを見る。

「コレは、のなめよ。少し前から煉瓦亭にいるわ」

ソラとは誰のことか考えていると、がらくたサマが反応を返した。
どうやらソラとは、がらくたサマを指す名前だったようだ。
名前があるのならば、今度から自分もがらくたサマを、ソラ、と呼ぶべきだろうか。

「のなめ、コレはジルフェオード。ココの外で、医者をしている人間よ」

がらくたサマとソラという名前について考えていると、ジルフェオードについて説明をされた。
危うく聞き逃すところだったが、意識をがらくたサマの言葉に戻し、しっかりと聞き受けた。

はじめまして、と言って、ジルフェオードは手を差し出した。
同じように挨拶を返して、ジルフェオードの手を握る。
ジルフェオードの手は所々硬く、女性の手と言うには節があり
近くでよく見れば身長も体格も女性にしては少々大きい。
声が中性的でわからなかったが、どうやらジルフェオードは男性のようだった。

「そうだ、ソラ、ちょっと良いかな?」

ジルフェオードと握手を交わした後、コリコががらくたサマを呼んだ。
彼もがらくたサマのことをソラと呼ぶようだったので
ジルフェオードにがらくたサマの名前はソラなのかと聞いてみた。
曰く、煉瓦亭の住人は、大体がらくたサマをソラと呼ぶ、ということらしく
別にソラという名前が、がらくたサマの名前ではないとのことだ。
ややこしいことこの上ない。

「それは少し問題ね」

ジルフェオードの話に気が向いていた為、がらくたサマが
何のことを言っているのか聞き損ねた。
問題だ、と言う割に表情が変わらないがらくたサマ。
代わりにコリコを見れば、こちらは困ったようにがらくたサマを見ていた。

何が問題で、なぜコリコがそのような顔をしているのかわからず、首を傾げる。

「商人の姿を、タカラが見かけたそうよ」
「正しく言い換えるなら、泥棒、だけどね」

がらくたサマの言葉をコリコが苦笑して訂正した。
商人が泥棒、と言うのはいったいどういうことなのか。

商人は物品を売る者。
泥棒は物品を盗む者。

二つの職業がイコールで繋がらず
言葉を告げずにいると、タカラが大きく手を挙げた。

「モノを盗っていって、売っちゃうんよ。だから、泥棒の商人なんよ」

とても解釈しやすい説明だった。
補足するようにがらくたサマが言葉を続ける。

曰く、花祭りに限らず、祭りでは雑貨屋から、珍しい物品が集落に貸し出されるという。
外では出回っていないような非常に珍しい品も貸し出されることがあり
それらは売ればとても高い値段になるらしい。
そのため、珍しい品を盗みにやってくる泥棒、基商人が少なからずいるそうだ。

「祭り時は皆、警戒心が薄れるから、盗まれやすいのよね」

まぁ、簡単に盗まれる訳にはいかないけれど。
ジルフェオードも苦笑してみせる。

「今回は、酒の湧く壺が、ソレに当たるのよ」

がらくたサマが小さくため息をつく。
確かに件の壺も、雑貨屋から持ってきたものだと言っていたことを思い出す。
その壺を盗もうとしているらしい泥棒の姿を
タカラが目撃したということが、がらくたサマの言っていた”問題”というモノなのだろう。

「一応集落のヒトも、珍しくて盗むヒトがいるっていうことは
 理解してくれているから、管理もちゃんとしてくれてはいるんだよ」

コリコの言葉に頷いてみせる。
そしてふと疑問がよぎる。

何故集落に貸し出されている物品を盗むのかと。
何故雑貨屋から盗もうとしないのかと。

特異な疑問ではないはずなのだが、この場にいる者からその話題がでることはない。
それほど、当たり前なことなのだろうか。
その内にソレとなく訊ねてみようとおもいつつ、がらくたサマへ視線を向ければ
相変わらずの感情を読みとることのできない表情をして
あたりをキョロキョロと見回していた。

「おや、がらくたサマじゃないかい」

声をかけられ、皆が一斉に声の方へと顔を向ける。
そこにいたのはエプロンがよく似合うふくよかな女性で、にこにこと愛想の謂い笑顔をしていた。

「雑貨屋から壺を届けてくれたそうじゃないかい。いつもいつも、ありがとうねぇ」
「ソレはいいわ。それよりも、聞きたいことがあるの」

女性の感謝の言葉を横へ置き、がらくたサマが訊ねる。

「タカラがいつもの商人達を見たというのだけれど」
「あぁ、いつものアイツ等のことかい?
 昨日そんな姿を見たって聞きはしたけど、まだうろついているのかい?」

その問いにタカラが頷いて見せた。
女性は、やれやれ、とため息をつきながらタカラの頭をなでた。

「男衆を何人か連れてきた方がいいかい?」
「その必要はないわ、貴女達は祭りの準備をしてちょうだい。壺の方も、見ていてくれると助かるわ」

がらくたサマの迷いのない発言に、女性はカラリと大きく笑って見せた。

「そうかい?それじゃぁ、そっちは任せるよ」
「あぁ、多少騒がしくなるかもしれないけれど、そこは大目に見てちょうだいね」

女性の言葉にジルフェオードが苦い笑いで応える。
女性も、気にしないさ、と言って彼の背中を、強く叩いた。

「じゃぁ、集落の皆にはそう伝えておくよ」
「頼んだわ」

お願いね、と言ったがらくたサマの言葉に
女性は短く、はいよ、と答えて祭りの準備を行っている雑踏の中に戻っていった。

「アナタ達はどうするの?」

その場に残ったタカラ、コリコ、ジルフェオードに、がらくたサマが訊ねる。

「もちろん同行させてもらうわよ」
「タカラもいくんよー!」
「僕もいくよ」

三人の手が順々にあがっていき、そして四人分の視線が自分へと向けられた。
どうする、と視線で問われる。
何がどうするのかわからないが、見知らぬ集落の大勢より見知った煉瓦亭の少人数、
ということで恐々と手を挙げると、タカラは楽しそうに、

「みんなでいくんよー!!」

と跳ねて喜んだ。

 

 

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