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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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見習いの医者がガラクタの山の中で出会ったのは
空と同じ金色の髪を持つ少女だった。





 

ここはどこだ。

目覚めたばかりでまだ重い瞼を擦り、ジルフェオードは起き上った。

金色の空には太陽が昇っており、それがまだ昼間であるということを主張していた。

周りをぐるりと見回すが、高く積み上げられた廃材や何に使うのかわからない機械や、文明国で目にしたことがある車が廃棄されている。一目でここが街ではないことがわかった。


――ここはどこだ。


 ジルフェオードはもう一度自分に問うた。しかし理解できない。

自分は学院近くに借りている自分のアパートで寝ていたはずだ。断じてこのようなゴミ捨て場に来た覚えはない。

 
――とにかく人を探そう。


 人がいるかどうかも定かではないが、ここにただ座りこんでいるよりは周りのことを把握できるだろうと思い、歩きやすそうな場所を選びながらガラクタの山を登り始めた。

大小様々なガラクタの山を登り下りしながら、周りの風景を確かめるが、どこまでも続く灰色のガラクタばかりで、一向に森の緑も、街の華やかな色も見えることはない。落胆しながら足を動かしていたが、その足が止まった。

何かの気配を感じる。それも良い気配ではなく、もっと何か、身の危険に近いものだ。

足早にガラクタの山を下りて、開けた場所へと移動すると、周囲を一瞥する。

ガタリ、とガラクタの山が崩れた。そこへ意識を向ければ、そこには大人二人分の大きさのある羽虫が、ギラギラと輝く目でジルフェオードに視線を向けていた。


「なっ……!?」


 自分の知りえる中でも見たことのないような巨大な生物にジルフェオードは絶句し、無意識に一歩後ずさった。

手元に武器になるようなものはない。戦う気も起きなかったが、何か自分の身を守れるものを必要としていた。ガラクタの山をサッと見回してみるが、武器になりそうなものはなく、すぐに逃げ道を探すことに思考を切り替えた。

しかし羽虫の方が早かった。ジルフェオードが武器を探すために視線を逸らした瞬間、巨大な羽をはばたかせて、無防備なジルフェオードめがけて飛んできた。

逃げ道を見つけられなかったジルフェオードは体を強張らせる。


――やられる……ッ!!


 強く目を瞑って次いで来るであろう衝撃を覚悟した。

痛みは、無かった。

恐る恐る目を開けると、視界には黒が広がっている。よくよく見ればそれはガラクタの山から延びており、視線を上に向けると蛇のような、それでいて巨大な体躯と黒い羽をもった未知の生物が

ジルフェオードと羽虫の間に割って入り、守るように羽虫を威嚇していた。

 羽虫はジジジツと耳障りな音を立てて宙を旋回し、巨大な黒い生物と一定の間隔を保っている。

 普段生活しているうえで目にすることもないような、理解のできない生物を見て、ジルフェオードは腰を抜かして、その場に座り込んだ。現状を正しく理解できているかも、自分にはわからずただただ青い瞳を眼の前の黒い生物に向けているだけでせいいっぱいだった。

 

「腰を抜かすのは構わないけれど、気絶はしないでちょうだいね」

 

その場に凛とした声が響き渡った。ぼやけた思考を一気に現実に引き戻すその声が耳に届いた途端、眼の前にいた黒い大蛇は掻き消える。次の瞬間、羽虫を中心に爆発が起き、鈍い鳴き声を上げ、羽を燃やして地に落ちた。

それを目の当たりにしたジルフェオードは、ポカンと口を開いて焼け焦げた羽虫を見つめた。羽虫はしぶとく生きているようで、かすかに羽を動かしながら、節のある手足を動かし、ジルフェオードに近づいてきた。


「あ……」

「そのまま動かないで」


 その声が届くと、今度は黒の代わりに空と同じの金色が視界を埋めた。それが輝く髪の毛だと気付いた時には羽虫の鳴き声が止み、辺りに静けさが戻っていた。金色の髪の横から羽虫を覗くと、羽虫の頭に銀色の剣が刺さっており、それが致命傷になったのであろうことがわかった。


「あ、ありがとう」


 恐々とお礼を言えば金色はくるりと振り返った。太陽の様なピンク色の双眸と人形のように整った顔立ち。髪の毛は輝く金糸が緩やかなウェーブになっていて、風が吹くとゆらゆらと靡く。纏っている衣服は夜を溶かしたような紺碧を思わせる黒いロングスカートだが、裾が所々ほつれていてみずぼらしさを感じるが、その人物の気風か、貧しさを思わせることはなかった。身長は自分よりも低く、顔を見た瞬間その人物が少女であることがわかった。

少女は何も履いていない素足で、ペタペタと音を鳴らしながらジルフェオードの周りを一周する。まるで彼が何者であるかを品定めするかのように。

居心地の悪さを感じたジルフェオードは、少女から離れて慌てて両手を前で振った。


「あ、アタシは怪しいものじゃないわ!! ジルフェオード。見習いの医者よ」


 早口に自分の名と素性を明かすと、少女はこてりと首を傾げて「じるふぇおーど……」と呟いた。


「えぇと、アンタの名前は?」

「がらくた」

「へ?」

「がらくたよ、私は」


 がらくた。それは本来ヒトを指して使う言葉ではない筈だが、ジルフェオードには心当たりがあった。その考えが外れてほしいと思いながら、彼は少女に質問をする。


「あの、ここはどこかしら?」

「ここはジャンクフィールド。廃棄される町よ」


 ジルフェオードの顔から血の気が引いた。

 ジャンクフィールド。その名は高度文明の街にいれば、いやこの世界にいれば誰しもが聞いたことのあるであろう名だ。廃棄される街という名の示す通り、がらくたとされたモノたちが辿り着く場所だ。がらくたとされる定義は様々だが、もっとも有力とされる定義が『世界に不要とされたモノ』だ。

 となれば、自分がここにいるということは、自分はがらくたになったのであろうか? そう思い、ジルフェオードは頭を抱えた。

 それを見て少女はジルフェオードの顔を覗き込む。青い瞳と宝石のようなピンク色の瞳が、かちりと視線を合わせる。


「あなたはがらくたではないわ」

「え?」

「自分のこともわからないのかしら? よく自分の胸に手を当てて感じ取ってみなさい」


 少女はジルフェオードの方手を取り、彼の胸に手を当てさせる。感じ取る、と言われてもジルフェオードはどうしていいかわからなかったが、少女がふざけた様子も見せず、まっすぐに見つめてくるので、仕方なくそれらしく見せる為に目を閉じて意識を集中させる。

 掌と意識に、自分の心臓の音が静かに響いてくる以外に、何も感じられない。諦めて目を開こうとした時、瞼の裏にきらりと何かが輝いた。それは金色に輝く糸のように見えた。その意図はまっすぐに伸びて、自分の腕に巻きついているように感じる。そしてその先には先ほどまで見えなかった眩しいほどの光の結晶があった。

 ハッとして目を開くと、光は消えて、眼の前には金髪の少女の姿があるだけだった。


「アレは……」

「感じ取れたかしら」


 曖昧なまま頷いて見せると、少女はひとつ頷いてジルフェオードの手を離した。


「えぇと、そうね…がらくた…ちゃん?」

「皆はがらくたサマと呼んでいるわ」

「随分エラそうね…じゃぁあがらくたサマ? アタシ周りのことを確認したいの。誰かヒトのいる場所へ連れて行ってくれるかしら?」


 ジルフェオードの言葉に、少女――がらくたサマ――は少しの間をおいて頷き、裸足のままガラクタの道を歩き出した。その後ろについて歩き出したジルフェオードは、ふと脳裏に何か引っかかるものを感じたが、こちらを気にせず前を歩く少女に追いつくために急いで足を動かした。

 

 

 

 

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