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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっています。

世界に色なんてなかった。
そう思うようになったのはいつからだったのだろうか。
いつもと同じ、変化のない、繰り返すだけの日々に飽き飽きしていた自分が
少しの好奇心と、所謂ストレスから、ジサツととばれる自傷行為に
興味を持つなんて思いもしなかった。
やってしまえばきっと簡単。
結果はどうにでもなれと、半ばやけくそ気味。
内容があるのかどうかも分からない、形だけの遺書をポケットに押し込めて
発見される可能性が早いと思われる学校の屋上へと昇っていく。
トビオリジサツ。
定番すぎて笑いがこぼれた。
屋上の、高いフェンスの向こう側は、人が一人立てる程度の幅の足場と
足場のない宙が広がっていた。
四階建ての校舎。
落ちるには充分な高さだったと思う。
フェンスを乗り越えて校舎の縁に立つ。
時間帯はすでに夕暮れ。
グラウンドには部活で残っている生徒がまばらに見えるが
誰も屋上に立つ姿に気付いてはいないようだった。
片手でフェンスを掴みながら、体重を遮る物のない宙へと傾ける。
手を放すだけで、身体は重力のまま下へと落下するだろう。
手を放すだけで。
 
 
 
「そのせいであなたは死ねなかったようね」
 
 
 
勢いよく開いた視界に映ったのは、整った木目の天井と
無表情を貫いた眠そうな目をした、がらくたサマの姿だった。
慌てて体を起こそうとすると、額を強く押さえつけられ
のなめの身体はベッドへ逆戻りさせられる。
と同時に、クラリと脳内を何かが揺さぶるような感覚が起こる。
眩暈、と気づくのに、数秒かかった。
 
「まだ寝ていなさい」
 
決して強くはない、けれど有無を言わさないその言葉に
喉奥が、ぐっと詰まった。
 
「なんで、寝ていた?」
 
無言でいることに息がつまりがらくたサマへ尋ねれば
少女は一度視線を、のなめから外し、悩むような素振りを見せる。
何かおかしなことを聞いただろうかと、のなめは首を傾げた。
 
「どこまで覚えているのかしら?」
 
疑問は疑問で返された。
どこまで、というのはどういうことなのか。
寝ぼけたような感覚の頭で記憶を手繰れば、ガラクタ置き場で黒い人影に
襲われたことを思い出す。
一気に覚醒した頭が考えたのは自分の身体の安否、次いであの場に一緒にいた
セイランとタカラの安否だった。
 
のなめはゆっくりと起き上り、自分の体のあちこちを触ってみる。
身体にけがはない。
安堵の息をついて、がらくたサマへ視線を投げる。
 
「タカラとセイランは?」
「セイランが小さなかすり傷を作っただけで済んでいるわ」
 
あの状態からかすり傷で済んだセイランに拍手を送りたい。
二人の無事に、のなめは安心した。
そんなのなめを見て、がらくたサマは口を開く。
 
「あなた、“マガツミ”だったのね」
 
マガツミ。
それはタカラが黒い人影を指して使っていた言葉だ。
がらくたサマがなぜ今その言葉を使うのか、のなめには理解できなかった。
「本能と理性に分かれた不確かなモノ」
 
――それがマガツミよ。
 
ヒトは本能を理性で押さえている。
その二つの相反する精神が、何かの拍子に分離してしまったモノのことを
マガツミ≪歪身/歪罪≫と呼ばれているという。
 
「私は直接見たわけではないけれど、タカラとセイランの話だと
 貴方が理性で、であった黒い影というのが本能のようね」
 
淡々と言葉にするがらくたサマに、のなめは曖昧な表情で
首を傾げることしかできなかった。
 
「理解していない、という顔ね」
「自分の状況がいまいち把握できない」
「そうね、あなたは別の世界からきていたのよね」
 
――ヨソビトではないけれど。
 
言葉の最後に、そう付け足した。
何故それをがらくたサマが知っているのかと、のなめは疑問に思ったが
セイランたちが黒い影のことを説明していたのなら、その件も
彼女に報告していたとしてもおかしくはないことに思い当たった。
 
「簡単に言うと、今アナタはヒトではないのよ。
マガツミという名の……化け物かしら」
 
化け物、という言葉を使う時に、がらくたサマは少し考えるような素振りを見せた。
まるで、その言葉は的確ではないのに、それ以外の言葉が浮かばないような。
のなめにはそう見えた。
 
化け物と言われた時、のなめはショックをあまり受けなかった。
やはり、いまいち自分の状況が理解できていないことが、原因のような気もしていた。
 
「それで聞きたかったのだけれど、アナタはどうしたい?」
 
何がどうしたいのか、なのか、のなめにはわからなかった。
がらくたサマも、目を瞬かせるだけで何の反応もないのなめを見て
ようやく自分の言葉が足りないことに気付いた。
 
「アナタのマガツミ、被害が出ているからどうにかしたいのだけれど
 協力をしてくれるかしら?」
 
具体的にはどう協力するのか不明だったが、のなめは恐る恐る頷いた。
 
 




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