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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっています。







 
 
ファイと別れた後、セイランの提案でのなめとタカラの三人は
開けたガラクタ置き場に来ていた。
金色の空を仰ぎ見ながら、ガラクタ置き場を吹き抜ける風を感じる。
 
「ここがJFでなければ、昼寝にはもってこいの環境でござるな」
「タカラどこでも寝れるんよー、ここでも寝れるんよー」
 
言いながら、コロリとその場に寝転んだタカラを、のなめは苦笑して見ていた。
 
「のなめ殿、大丈夫でござるか?」
 
セイランが問うと、のなめは反射的に頷いた。
 
「ファイとの話、わからない言葉の方が多くて、きちんと理解しきれてないんだ」
 
だから、とりあえずショックは少ないんだ。
のなめの言葉に、セイランの眦が下がる。
物騒だからと渡された剣を一瞥し、のなめは大きく溜息をつく。
 
「煉瓦亭に戻ったら、がらくた殿達と話し合ってみるでござるよ。
 今後のことについて、何か案が出るやもしれぬでござる」
 
励ますようにセイランがのなめの肩を叩くと、拍子に手の中から
剣が滑り落ちそうになり、慌てて持ち直した。
セイランは小さく声を漏らし、のなめに謝った。
 
「剣の扱いもどうするか、話し合った方が良いでござるな」
「のなめちゃん、戦えるんよ?」
 
戦えないんよ。
 
デジャヴのような質問に、同じくデジャヴのような反応を返す。
ひょこりと起き上ったタカラは首を傾げて、のなめの手にある剣を見つめる。
何か言いたそうにしているタカラが、口を開いた時。
 
「タカラ殿」
「……気のせいじゃないんよ?」
 
セイランとタカラが顔を見合わせて、素早く立ち上がり、辺りを見回す。
のなめも慌てて立ち上がろうとしたが、セイランに止められた。
 
「のなめ殿は動かないでくだされ」
「タカラ達から離れちゃダメなんよ」
 
いつもの元気な声とは違い、緊迫した様声で落ち着きなく、視線を彷徨わせる。
何事かと、のなめは不安げにセイランとタカラを見比べた。
 
セイランは小太刀の柄に手をかけ、タカラは金輪―チャクラム―に指で触れる。
ガラクタ置き場に、生温い風が通り抜ける。
 
と。
 
――チャリン。
 
小さな金属がぶつかり合うような、小さな音があたりに響いた。
のなめは驚いて音の方へ顔を向ける。
 
「な…ッ!!」
 
音の鳴ったガラクタの小山を見ると、そこには黒い、酷く不定型な靄がかかっていた。
靄の中に人影のようなものがうっすらと確認ができ
辺りの靄はその人影を中心にしてねっとりと漂う。
 
「セイラン、何あれ」
「いや、某にも何なのか…」
 
のなめが問えば、セイランはしどろもどろになりながら言葉を返す。
形容しがたい何かは、靄を纏いながらゆっくりとその場で奇妙な動きを続けている。
 
「“マガツミ”なんよ」
 
タカラが呟いた。
呟いたというには随分とはっきりとした声だったが
タカラは形容しがたいものを示してそう言った。
 
「セイランちゃんは見たことなかったんよ?」
 
視線は靄から外さず、タカラがセイランへと問いかけると
問われたセイランは最小限の動きで肯定した。
 
「タカラ殿、マガツミとは…」
「セイランちゃん、何か変な声聞こえるんよ?」
 
タカラの言葉にセイランは口を閉じ、意識を耳に集中する。
静寂の中では大きすぎるその音は、次第にのなめ達の耳にはっきりと聞こえてきた。
 
 
――イヤダ……タク、ナイ。
 
 
それは音というよりも、声。
発声しているのは、黒い靄の中に立つ人影から。
言葉を解すことのできるモノだとは思っていなかった
セイランとのなめは酷く驚いた。
 
「え」
 
驚いた瞬間、のなめの体を何か強い力が引き倒した。
突然のことに対応できなかったのなめは
そのまま体を強くガラクタの山に打ちつけた。
何が起きたかわからず、痛みを我慢しながら体を起こそうとすると
ちょうど頭上を何かが通り過ぎるのを感じた。
 
次から次に何なんだ。
 
のなめが通り過ぎた何かへと目をやれば
そこには見覚えのあるモノがガラクタの山に突き刺さっている。
大きさは違うが、ちょうど手首から肘までの大きさはある、カッターナイフが
刃をむき出しにしてガラクタ山にしっかり刺さっていた。
 
倒れていなかったら、それは自分に突き刺さっていたであろうことを考え
のなめは言葉を失った。
 
「大丈夫なんよ?」
 
隣から聞こえたタカラの声に反射的に顔を向ければ
タカラがのなめの服をつかんでいるのが見えた。
のなめを引き倒したのは、どうやらタカラだったらしい。
 
「御二人とも、大丈夫でござるか!?」
 
少し離れた場所から動いていないセイランが、声をかける。
タカラが手を振って答えると、セイランは安堵したように息をつく。
のなめはぎこちない動きで靄の中の人影を見る。
 
靄の中にたたずむ怪しい人影は、もぞもぞと輪郭のない動きを繰り返している。
一言で言えば、不気味以外の何物でもない。
カッターナイフを飛ばしてきたのはその人影だろうかと思考する。
 
考えていると、タカラが動いた。
手に持ったチャクラムを、人影めがけて投げつける。
靄がチャクラムを避け、障害のないチャクラムは人影の首を裂いて落とす。
 
簡単に落ちた人影の首に、タカラはびくりと肩を震わせた。
セイランが目を見開いて、人影と落ちた首を見比べ
もう一度小太刀を構えなおす。
 
「し、死んじゃったんよ……?」
 
思ってもいないことだったのか、タカラがオロオロと
落ちた首とセイランを忙しく見直す。
人影の周りには、変わらず靄が漂っている。
のなめは恐る恐る動き、人影の立つ許へと近づいた。
タカラが制止の声をかけるが、大丈夫だと手を振って返す。
 
漂う靄を手で払いながら、人影の前に立つ。
おぼろげで輪郭のなかった人影だが、近づいてみてもそれは同じだった。
酷くぼやけた黒い人影。
 
それはまるで、影を直立に立たせて輪郭をぼやけさせたように
何の特徴もないただの影だった。
 
「そういえばタカラ殿、マガツミとは何でござるか?」
 
のなめが近寄っても動きのない人影に安心したのか
セイランは小太刀を収めてタカラへと向き直った。
タカラはきょとんと首を傾げて、言葉の意味をもう一度考えた。
 
「マガツミは、マガツミなんよ」
「それは何なのか、某は解らないのでござるよ?」
「なー……」
 
困ったようにセイランを見つめるタカラにセイランは
困ったように笑みを浮かべた。
タカラの中では、人影はマガツミであり
それ以上の説明のしようがないということにセイランは気づいたのだろう。
 
仕方がないと、セイランはタカラの頭を撫でた。
 
「アレはマガツミというのでござるな」
「なんよ。アレはマガツミなんよ」
 
にっこりと笑顔で返すタカラに、セイランも笑顔を見せた。
 
かわって、のなめはマガツミと呼ばれた人影に触れたり
靄を観察したりと、思いのほか積極的に行動していた。
 
理由はあった。
 
マガツミが投げたと思われるカッターナイフに、のなめは覚えがあった。
 
――あのカッターナイフは、自分の所持していたものと思われる。
 
記憶喪失の身ではあるが、何故か件のカッターナイフは
自分のものだという確信があった。
 
ならば、このマガツミは自分の記憶と何か関係があるのではないかと思い
積極的に調べるという行動に出ることができた。
 
何か記憶の手掛かりはないかと、マガツミの周りをうろついてみるが
記憶の手掛かりになりそうなコトは何もない。
ならばと、足元に落ちたマガツミの頭部を恐々と拾い上げようと、
 
 
――シニタクナイ
 
 
した。
声を発したのは落ちている頭部ではなく、立ち尽くす人影の方だった。
のなめは驚愕し、反射的に人影から離れようとした。
が、一瞬早く人影が動き、のなめの首元を掴んだ。
 
のなめの喉から、声とも呼吸とも取れる、潰れたような音が漏れた。
 
「のなめちゃん!?」
 
異変に気付いたタカラが叫ぶ。
その声に反応したマガツミの周りに、どこから現れたのかわからない
しかしのなめにはひどく覚えのあるモノが浮かんでいた。
 
学校の机、ロッカー、ハサミ、自転車。
 
細々とした物も含めると相当の数になるそれらが、マガツミの周りに浮かび
一瞬動きを止めて、一斉にタカラとセイランへ向かって抛られた。
 
潰される。
 
セイランはタカラを抱え込み、来るであろう衝撃に備えた。
 
首を強く絞められたのなめの意識は、その光景を見た瞬間途絶えた。
 
 
 

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