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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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一次創作で小説を書いてみる。
短いはずが何だか長くなっています。
もうちょっとで区切りがつくかな?






「いる?」
「いないわね」

太陽がようやく顔を出してきた頃、のなめ達は煉瓦亭を出て、マガツミの捜索に出かけた。
集落から離れたガラクタの道を、当てもなく彷徨うこと2時間。
マガツミに出会う気配は今のところない。

タカラは集落へ向かい、万が一の場合を考えて待機しているよう、がらくたサマに頼まれた。
がらくたサマ、ジルフェオード、セイラン、コリコの4人は
のなめに同行してマガツミを探している最中だ。

「タカラは大丈夫?」
「集落にいるし、万が一マガツミが集落の結界近くに現れても、ソラがわかるから大丈夫だよ」

コリコの言葉にのなめは少しの安堵感を覚えた。

「他人の心配をしてる場合じゃないでしょ。
 それにマガツミを片付けちゃえばそんな心配することもないのよ」

先頭を歩くジルフェオードが呆れたように言えば、のなめは言葉を詰まらせて
小さく謝罪の言葉を述べた。
そんなのなめを見て、がらくたサマがのなめの頭を、子供をあやすようにして撫でた。
思わぬ扱いに、のなめは驚いて、勢い余ってガラクタに躓いて転んだ。

「大丈夫でござるか?」
「ちょっと痛かったデス」

セイランが手を差し出して、のなめを起こした。

「そろそろ某達がマガツミに出会った場所に着くでござるな」
「あら、煉瓦亭とそんなに距離は離れていないのね」

セイランの言葉にがらくたサマが少し感情のこもった声を出した。

「そういえば、のなめを拾ったのもこのあたりだったわね」

がらくたサマが言うと、えっ、と他の3人が声を出して驚いていた。
あいにく、のなめは拾われた時の状況が状況だったため
どこで自分が拾われたのか詳しくは知らなかった。

「それって偶然?」
「偶然にしては出来過ぎてるでしょう」
「のなめ殿、何か心当たりは…」

無いに決まってるでござる。
のなめが言葉を返すと、だよね、とコリコが呟く。

「偶然にしろ必然にしろ、マガツミは何とかしなければならないわ」

がらくたサマが銀のシャベルをくるりとバトンのように回すと、ソレは
銀の剣に変わり、彼女の装いも、以前リーオンと対峙した時と同じ
騎士の装いに変化していた。

何事かと思った瞬間、コリコに勢いよく腕を引かれた。
次の瞬間、今まで立っていた場所に砂埃が舞い上がっていた。
何が起こったのか理解できないまま、コリコと共に倒れこんでいたが
間髪入れずコリコが強い力でのなめを突き放し、距離をとった。
のなめとコリコの間に、銀色の一閃が走ったかと思うとそこにも砂埃が舞っていた。

のなめは息をのんだ。
砂埃の中、目を凝らしてみれば、そこにはいつかの時と同じように
ハサミやカッターナイフ等の、のなめのよく知る様々なものが散乱していた。

「噂をすれば、なんとやら?」
「ちょっと鬼、のなめのマガツミってアイツなの?」
「……某とタカラ殿が出会ったマガツミに相違ない」

セイランが小太刀を構えると、ジルフェオードとコリコもほぼ同時に武器を構える。
セイランとタカラが出会った、不定型で黒い靄がかかったマガツミは
一行の前に音もなく現れた。
それを初めて見たジルフェオードは眉を寄せて、何か言いたげにのなめを見るが
言葉は出てこず、視線をマガツミへと戻した。

マガツミの周りの靄がゆったりと集まり、やがて人の形を作る。
それを形容するならば、まさに鏡。
のなめの外見と酷似しており、違うところと言えば顔に奇妙なお面をかぶっているということだ。

「間違いないわね、アンタのマガツミよ」

ジルフェオードの言葉が終わるとほぼ同時に、マガツミが両手を広げた。
掌から黒い靄が吹き出し、先ほどのマガツミと同じように、人の形へと固まっていく。
その数3体。

「エスコートしてくれるみたいだよ」
「相手が相手じゃ、嬉しくないわねぇ」
「2人とも暢気すぎるでござる。がらくた殿も何か…」
「あの3体、そちらに任せても良いか?」

こちらはのなめと、本体を叩く。

がらくたサマが銀の剣を一度薙いだ。

『任された』

3人の声がひとつになった。
のなめだけは話の勢いについていけず、疑問符を浮かべていたが
自分が指名されたことだけは理解した。

バンッ、という破裂音に驚いて意識がそちらに向いた。
ジルフェオードの長銃が火を噴き、人型をした黒い靄に命中した。
黒い人影はよろめいたが、すぐに体勢を立て直す。

「のなめ、行くぞ」

がらくたサマに手を引かれて、視線をそちらに移せば
マガツミがこちらに背を向けて、ガラクタの山を越えているところが見えた。

「ここで逃げられると面倒だ。追いかけるぞ」

手を握られたまま勢いよく走りだしたがらくたサマに、のなめはされるがままついていった。

 

 


何度か見失いそうになりながらもマガツミを追走していた、のなめとがらくたサマの足が止まった。
ガラクタの少ないとても開けた場所で、マガツミは逃げることを止めた。

「追いついたな」

剣を構えてがらくたサマが、マガツミへとにじり寄る。

『シニタクナイ イヤダ イヤダ!!』

マガツミが声を荒げる。
のなめは思わず体を震わせ、一歩後ずさった。

「のなめ、アレを静めて元に戻せそうか?」
「静める?」
「…その様子では無理そうだな」

ならばと、がらくたサマは剣を構え、マガツミに向き直る。
マガツミの周囲には、のなめの見覚えのある、机やカッターナイフ、包丁等
当たりどころが悪ければ怪我では済まないモノが浮かんでいた。

「下がれ、のなめ!!」

がらくたサマが声を上げると同時に、はじけるように浮かんでいたものが
のなめに向かって飛んできた。

悲鳴を上げる暇はない。
反射的に横に不器用に飛んでそれらを避ける。
今まで立っていた場所にはカッターナイフや机がめり込んでおり
あのままそこに立っていればどうなったか、考えるよりも簡単だった。

のなめが腰を引いている間に、がらくたサマは地を蹴ってマガツミの懐に飛び込み
銀色の剣を勢いよく薙いだ。
しかし剣が触れる直前、マガツミの体がが霧のように霞み、通り抜けた。

『ドウシテ コロソウト スルノ?』

マガツミの音が震える。

「本能が一人で勝手に暴走しているのを、見過ごすわけにはいかない」

犠牲者が出る前に。

『生キタイと思ッテ ナニガ悪イ
 ソイツハ 生キルコトヲ放棄シタ
 俺ガ代ワリニ生キテ ナニガ悪イ』

がらくたサマの返しに、マガツミは怒りを表した。
示されたのなめは、ビクリと体を震わせ、がらくたサマとマガツミを交互に見た。
マガツミが腕を振るうと、その手の中に黒い剣のようなものが現れ
がらくたサマに向かって振り下ろされた。

率直な剣筋をみて、がらくたサマが難なくその一撃を止める。

「おい、言われてるぞ」

がらくたサマがのなめに声をかける。
意味が解らず、呼吸だけが漏れる。

「このマガツミはお前に成り代わると言っているんだ。
 何も言い返さず、本当にこいつの思うようにさせていいのか?」

こんな時でも眠そうな眼をしているがらくたサマの桜色の瞳が
のなめの黒い目をじっと見つめる。

剣を杖の代わりにして、恐々と立ち上がりがらくたサマと切り結ぶマガツミを懸命に睨みつける。

キィン、と金属音を響かせてがらくたサマとマガツ身が互いの距離をとった。
黒い霞がいっそう濃くなったかと思うと、マガツミは方向を変え、のなめに切りかかった。

がらくたサマは動かなかった。
のなめは握った剣を振り、マガツミの一閃を弾き飛ばした。
初めて味わう本気の斬撃に、じんっ、と手が震える。

マツガミも、元はのなめと同じだったこともあるのか剣筋はおぼつかず
剣に不慣れののなめでも、剣撃を防ぐことができた。
しかし、いつまでも攻防を繰り返していてはらちが明かない。

どうすればこの押しも引けもできない状況を打破できるのか。

『ユルサナイ オマエハ…!!』

呟くほどに強くなる剣撃に、のなめがひるむ。

マガツミが何をそんなに怒り、許さないというのか、のなめにはわからなかった。
精一杯頭の中で考えるが、目の前の剣を避けるのにも必死で思考が、


―――そのせいであなたは死ねなかったようね―――


追いついた。
確証はないがあの時のがらくたサマの言葉が、脳裏をよぎった。
それを合図にしたかのように、キン…、と耳鳴りがした。
一瞬の耳鳴りのあと、ポケットの中に入れていた、丸め込まれた遺書がまぶしく光った。


 

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