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「大王、良いでしょう?」
「ダメだよ鬼男くん…ッ、こんな、すごいの…ッ!!」
「何言ってるんですか、大王、こういうお好きでしょう…?」
「そんなことな…ッ!!」
顔と顔がぶつかり合うほど近くで見つめあう閻魔と鬼男。
それを不思議そうに見つめる姿があった。
「…2人とも何してるのヨ」
鬼男が閻魔の腕をつかむ光景は、見様によっては逢引のように見えなくもない。
都市王はそんな2人を見て、生温い笑顔を浮かべた。
「あ、トシオさん!!ほら、鬼男くんトシオさんだよ!!お茶とお菓子用意して!!」
「それはあとで…、」
「ほら鬼男くんいそいで!!」
これ幸いと鬼男を促す閻魔に、鬼男はしぶしぶと従い部屋から出て行った。
「ありがとうトシオさん、助かったよ」
「オレ別に何もしてないけどね。で、あれはどういう状況だったワケ?」
「あ~……。これに判子押してって言ってごり押しされてたんだ」
閻魔が一枚の書類を見せ、都市王が受け取る。
一瞬の沈黙のあと「うわ…」と都市王が声を漏した。
「信仰強化月間、正装着用についての着衣案…すっかり忘れてたワ」
信仰心を大切にしましょうというキャンペーンで、十王全員が正装する期間。
都市王は苦笑いを浮かべて、書類を閻魔に返す。
「秘書クン、このイベント好きだよナァ」
「正装なんて、重いし固いし歩き辛いしで、着る方は大変なんだけどね」
「正装好きなのって、宋帝王くらいじゃナイ?」
あの子派手なの好きだし。
都市王の言葉に閻魔はため息をついた。
「で、閻羅ちゃん。正装についてもめてたノ?」
「いや、正装すること自体は問題ないんだけどね…」
―――派手なんだよ。正装が。
重々しく呟かれた閻魔の言葉に、都市王はきょとんとして首を傾げた。
正装は派手なのは今に始まったことではない。
それは閻魔も重々承知しているはずだが、閻魔は首を振った。
「トシオさんも知ってるでしょ。
正装のデザインって一部の獄卒たちから案が出されて、それを仕立てるって」
「そうだねぇ、結構みんな張り切って案を出してくるから、毎度この時期はにぎやかよネ」
「で、私の所では鬼男君が案を出してくれてるんだけどね」
「その案で出てる正装が派手ってコト?」
コクリと頷いた閻魔を、仕方ないと苦笑いで見る都市王。
「まぁ、少しの辛抱だし、諦めて印押しちゃったほうがラクになるヨ」
「他人事だと思てるでしょ?」
「まさか。オレん所だって役鬼達が張り切って案出してるんだから、明日は我が身ヨ?」
十王全員に同じことが言えると、都市王は言った。
都市王の言葉に閻魔はがっくりとうなだれた。
「都市王、お茶をお持ちしました」
「あ、秘書クンありがとー」
項垂れる閻魔をよそに、戻ってきた鬼男からお茶を受け取った都市王は
少し考えて鬼男に尋ねた。
「秘書クン、どんな衣装案だして閻羅ちゃん困らせらの?」
「別に普通の案ですよ。他の役鬼達と大して変わらないと思いますよ」
そういった鬼男の目は、本気だった。
何が本気かというと、気合が本気だった。
正装に関して一切の妥協はしないと、目が語っていた。
「その案、見せてもらってもいい?」
「構いませんよ」
鬼男の言葉に、閻魔が書類を漁り、資料を都市王に渡す。
資料を受け取った都市王が、文字に目を落とし、しばし動きが固まる。
「これ本気?」
「本気ですよ」
「閻羅ちゃん、前言撤回。これは派手だし恥ずかしいかもしれんワ」
でしょ!?、と閻魔が嬉しそうに頷く横で、鬼男は渋い顔をした。
「秘書クン気合入れ過ぎ。こんなに豪華な装飾じゃ威厳も何もないよ」
「前回のキャンペーンでは少し地味すぎた感があるので、色々付け加えてみたんですが…」
「服自体はそこまで派手じゃないけど、装飾品過多だねコレ。
派手すぎて何か嫌味に見えるかもしれない」
もうちょっと少なくしてね、と都市王が諭せば、鬼男は押し黙り小さく頷いた。
それを見た閻魔は、ほっと息を撫でおろした。
「閻羅ちゃんもそれで妥協できるでショ?」
「うん、ありがとうトシオさん。
鬼男君ったら私の言ったこと全然聞いてくれなかったんだもん」
「大王はあれこれ嫌がりすぎなんですよ」
「秘書クンは妥協しなさすぎるんじゃなイ?」
のほほんと都市王が言えば、鬼男と閻魔は何ともいえない顔をしてそっぽを向いた。