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短いはずが何だか長くなっています。
「いないわねぇ」
「見つからないね…」
「どこにもいないんよー」
「他に探してないところはござらぬか…?」
食堂に集まった一同の深いため息が、室内に響いた。
「真昼間っから現れて、あんな派手な攻撃してきたマガツミなら
すぐに見つかるかと思ったのでござるが…」
見つからぬでござるな。
セイランが再び溜息を吐く。
他の面々も同様に、疲れたように息をつく。
その中で唯一がらくたサマだけは、ゆったりと動きながら
皆に紅茶と茶菓子を用意していた。
「のなめ、アンタの方は何か感じたりしないの?」
ジルフェオードが、用意された茶菓子のクッキーをひとつ齧る。
初めてマガツミに遭遇してからこれまで、一度も例のマガツミと接触はしていないのなめは
ジルフェオードの言葉に、申し訳なさそうに俯いた。
何かを感じ取るというのも、のなめにはうまく理解できないが
特に変わったこともなく、平穏な空気に包まれている。
「当てもなく探し回っていたのがバカだったんだよ、きっと…」
グッと伸びをして、コリコは用意された紅茶に口をつけた。
甘さが足りなかったのだろう、一度ティーカップをテーブルに置き
角砂糖をふたつ、紅茶の中に落とした。
「のなめちゃんのマガツミに会ったとき、どうしてでてきたんよ?」
タカラがサクサクとクッキーを食べる。
「出現に条件でもあるのかな?」
「ちょっと鬼、何か気づいたことはなかったの?」
「某にはセイランという名があるでござる!!鬼呼びはやめていただきたい!!」
「うるわいわねぇ、誰か特定できるんだから別にいいじゃない」
紅茶を飲んでいたセイランのティーカップが、ピシリと嫌な音を立てた。
また口喧嘩のはじまりそうな空気に、コリコとタカラが視線を外す。
「それ以上続けるなら、また放り出すわよ」
「あら、喧嘩なんてしてないワヨ」
「そうでござる、喧嘩などするわけもないでゴザル」
がらくたサマの言葉に、ひきつった笑みを浮かべながら、2人はぎこちなく言った。
「のなめちゃん、マガツミに会ってから外に出たことあるんよ?」
「いや、煉瓦亭から離れたことはない」
「それじゃないの?」
タカラの言葉に、コリコがノった。
のなめが煉瓦亭から離れたことがないから、マガツミが姿を現さない。
「知らないかもしれないけど、煉瓦亭と集落にはソラの結界があるんだ」
「マガツミの入ってこられない結界なんよ」
「なるほどねぇ。本人の前にしか姿を現さないマガツミだって言うなら
たしかに姿を現さないのも納得だわ」
だって事の張本人が結界の中から出ないんだから。
納得したようにジルフェオードは頷いた。
実際のところそれであっているのかはわからないが、マガツミに遭遇しないことは事実。
「物は試しよ。のなめ、明日にでも煉瓦亭の外をうろつくわよ!」
ジルフェオードは、さぁ決まったと言わんばかりに、力いっぱい手を打ち鳴らした。
「じゃぁ、あとで集落のヒト達には、外を出歩かないようにって注意しておかないとね」
「それ、タカラがいってくるんよー」
はい、と手を上げてタカラがぴょんぴょんと跳ねた。
「一緒に行こうか」
コリコも動向を申し出て、タカラはうれしそうにくるくると回った。
「そうと決まれば、のなめ!!剣の稽古の続きするわよ!!」
すっかり紅茶を飲み干したジルフェオードに、首根っこを掴まれたのなめは
抵抗するまもなく、ずるずると引きずられて外へと引きずり出されていった。