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日和やオリジ等々の、絵ログや駄文を置く倉庫。
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オリキャラで短い話を書いてみる。
前の話『空の色』シリーズ → 『土の音』シリーズと、若干つながっています。





 “剣の一撃が重い”という表現は、小説や漫画の中だけだと思っていたが、
実際にそれを体感すると、重いという表現よりも、痛いという表現の方が
しっくりくるのではないかと考えた。
 
「ほら、ちゃっちゃと構えなおしなさい。次いくわよ」
 
鉄でできた、そこいらに転がっていたパイプを片手にしたジルフェオード。
時間は解らないが、30分程度はのなめは、彼と実技形式の、剣の打ち合いをしている。
剣といっても、のなめは真剣。
ジルフェオードは鉄パイプと、武器に差はあったが、剣を握ったことのないのなめには
結局のところ、自分に対して害をなす武器であることに変わりはない。
へっぴり腰で剣を構えて、ジルフェオードの打ち込みを防ぐことも満足にできない。
決定打になる一撃を撃ち込まれる際に、ジルフェオードはかなりの手加減をして打ち込んでいるが
痛いことは変わらず、のなめは撃ち込まれた部位を思わず押さえて、剣を落とす。
 
「何故こんなことをしているんだろう…」
 
のなめがぼそりと呟いた。
自分はマガツミとやらのとどめを刺せばいいだけのはずだ。
そんな疑問をジルフェオードが耳聡く拾った。
 
「たとえとどめだけでも、慣れてるのと初めてじゃ違うのよ。
 アンタにはある程度慣れてもらわないと、土壇場で変な気起こされちゃかなわないわよ」
 
溜息をついて、ヤレヤレと首を振るジルフェオードを視界の端にとらえながら
今しがた打ち込まれた個所を、のなめは優しくなでた。
 
「でも、記憶喪失の原因がわかってよかったわね。
 マガツミに全部持っていかれてたんだったら、ソレさえ倒せば記憶は元通りよ」
 
自分のことのようにジルフェオードはうれしそうに笑った。
マガツみや自分の関係性を何度か説明されたが
それを正しい意味で理解できたかというと、のなめは怪しく感じる。
むしろほとんど何もわかっていないのかもしれない、と。
 
それでも、記憶が元に戻る方法はマガツミとやらを倒す必要がある、ということだけは
しっかりと理解することができた。
根気よく何度も懇切丁寧に説明をしてくれた、コリコとがらくたサマに、のなめは
そっと感謝した。
 
そしてマガツミ倒す(記憶を取り戻す)手伝いをしてくれると言った
煉瓦亭の住人にも、しっかりと感謝する。
一人でマガツミと戦うことになどなったら
確実に命を落とすことは目に見えているのだから。
 
「そういえばアンタ、マガツミと接触したことで、何か思い出したこととかないの?」
 
ジルフェオードの言葉に、気を失っていた時にみた夢を思い出した。
あれは夢なのか記憶なのかもはっきりとしないが、何かしら
自分の記憶に関係はしていたのだろうと、のなめは考える。
がらくたサマも反応を見せていたことも思い出し、さらに確信を得る。
が、それを果たして目の前にいる人物に話してもよいのか、悩んだ。
 
内容が内容だ。
話したとしても、まともに理解してもらえるとは思えなかった。
夢を見たのなめ自身、自分が自分を殺すようなことをしていたとは
考えたくもなかった。
 
で、あれば、ジルフェオードの問いに対しては、ただ
否、としか答えようがなかった。
 
「あらそうなの?残念。記憶が少しでも戻ったら、ソラが喜びそうなのに…」
 
はて。
よろこぶ?誰が?
 
ジルフェオードを思わず凝視した。
すると彼は苦笑して、つぎにクスクスと可笑しそうに笑った。
 
「そんな顔すんじゃないわよ。ソラよ、ソラ」
「がらくたサマが?」
 
そうよ、と言って微笑んだジルフェオードの表情はとても優しかった。
先ほどまで稽古に使っていた鉄パイプを危なげなく、バトンのようにくるりとまわしながらジルフェオードは何顔をもいだすように、楽しそうに笑っている。
何がそんなに楽しいのか、のなめには解らなかった。
ただ、がらくたサマと呼ばれる少女のことについて彼が
とてもうれしそうにしていることだけは伝わってきた。
 
「まぁ、取り戻せるものはとにかく取り戻しなさい。
 本来一つのものが二つに分かれているわけだから
より多く自分に近いモノを取り戻した方が、戦うにしても有利なのよ」
 
それは理性でも本能でも関係なく。
 
「だから何か思い出したら、根こそぎ思い出すつもりで思い出しなさい」
 
がっしりと肩を掴まれて力説された。
しかしそれができれば苦労しないと、のなめはため息をつく。
そんな心情を察したのか、ジルフェオードは眉を寄せて、のなめの額を指ではじいた。
 
「溜息つくんじゃないの。誰のためにマガツミと戦うのよ」
「ジルフェオードは、がらくたサマのため?」
「あら解るのね。一応厳密に言うなら、ジャンクフィールドのため、よ」
 
いや、がらくたサマのためという方が正解に近いだろうと、のなめは思った。
数日間しか共にしていないが、ジルフェオードががらくたサマに対して
何かしらの好意のようなものを抱いているのは、短い期間ながらもよくわかった。
それがどのような好意なのかまでは、のなめには解らなかったが、少なくとも
彼が自分のためにマガツミと関わろうとしているわけではないことは、理解していた。
しかし、理由はどうあれ協力をしてくれるということは
のなめにとって喜ばしいことに変わりはなかったのだが。
 
「さて、そろそろ続きを始めましょうか。
せめて今日中には、アタシの攻撃をきっちりと受け止めてもらうわよ」
 
ブォン、とパイプを振り回して、迎え撃つ構えをとる。
つかの間の休息にのなめは情けない声を出しながらも、剣を手に取り、構えなおした。

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